速さを競う

ここまでは「正確に走る」ということを中心に説明しました。
ですので「ラリー」という言葉から、WRC などを想像されていた方には、 「日本のラリーってドライバーには面白くなさそう」 と思われた方もいるかもしれません。
そんなことはありません。
国内ラリーでも速さを競う部分はちゃんとあります。
それが、SS とハイアベです。

SS

SS (スペシャルステージ) は WRC のビデオなどでもおなじみです。
要は「よーいドン」で走って、 一番速く走った人の勝ちの区間です。
国内ラリーの場合は一般的に SS を走り切るのにかかった秒数が、その SS の減点 になります。
つまり、ある SS を走るのに 250 秒かかったら、 その SS は 250 点の減点となります。
SS を速く走れることができれば、その分減点は少なくなります。

ハイアベ

ハイアベは 「指示速度が高い (速い) ラリー区間」 です。
ちなみにナビゲーターがドライバーに指示速度を伝える時は、 「アベ xx km」といいます。
「アベ」はアベレージスピードの略です (多分)。
つまり、アベレージスピードが高い→ハイアベレージ = ハイアベということです。
例えば、55km という指示速度が与えられた時、 制限速度が 60km の国道でしたらオンタイム走行が可能ですが、 ヘアピンが続く狭い林道ならオンタイム走行ができない可能性が高くなります。
このような区間ではドライバーは遅れを最小限に留めるように走ります。

ハイアベにはパスコンハイアベとチェックインハイアベがあります。

パスコンハイアベは、 指示書の指示速度が高く、ハイアベとなる区間です。
指示書とコマ図からあらかじめハイアベとわかる場合もありますが、 実際にその地点まで行かないとわからない場合もあります。

チェックインハイアベは、 CP からの指示速度が高い区間です。
先に見たように、指示書には「○図から xx km」といった指示はありますが、 各 CP からの速度は指示されていません。
CP からの速度はその CP で指示されます。

ここで CP での処理について説明します。
CP の構成
コース上のある地点に CP ライン があります。
ここが CP になります。
CP ラインの先 (数 10 m〜100m 程度) には計測車が止っています。
CP ラインの脇にはオフィシャル (競技役員) がいて、 競技車の前輪が CP ラインを通過した瞬間に笛を吹きます。
計測車の中のオフィシャルはこの笛の音が聞こえた瞬間の時間を CP カード に書きます。
この時間が競技車が CP を通過した時間になり、 また、この CP のスタート時間になります。
競技車は一旦計測車の横で停車し、 計測車のオフィシャルから CP カードを受け取ります。
CP カードには CP ラインの通過時間と CP ラインからの指示速度が書かれています。

さて、競技車は CP カードを受け取るために計測車の横で一旦停車しますが、 この時間はおおよそ 10〜20 秒程度になります。
つまり、 この停車中はファイナルタイムがどんどん遅れている状態 となります。
CP カードに書かれている指示速度が低ければ、 この遅れをすぐに取り戻すことができますが、 高い場合は最初から遅れを背負った状態ですので、 全開で走らないと遅れを取り戻すことができません。
場合によっては、さらに遅れる場合もあります。
つまり、ハイアベとなります。

この SS とハイアベによって、ラリーのスポーツ性を高めています。

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